第3章 さて、KYOJIN no HOSHI はどの星？

第3節　昭和44年、春、（宮崎県日南海岸）

画17をみていただきたい。最愛の人・日高美奈に KYOJIN no HOSHIを、つまりは自分の宿命を告白する飛雄馬が描かれている。このシーンも KYOJIN no HOSHI を特定するにあたって、重要なデータとなる。

A　[季節]

このシーンは、昭和44年春の宮崎キャンプの、オープン戦を間近に控えた、とある夜のことである。この夜のミーティングで飛雄馬は川上監督から金田・宮田両投手とともに二軍落ちを宣告されている(18)。このときの川上監督のせりふは次のとおり。
「いよいよオープン戦の開始が間近い。しかし、わしの目から見てまだ、練習の仕上がっておらんもの、たるんでおるものはオープン戦に連れていかぬ」
昭和44年、巨人軍のオープン戦の初戦は3月7日(19)。よって、このミーティングは、その直前、昭和44年2月下旬〜3月6日と推定できる。

[季節に関する考察の結論]・・・昭和44年2月下旬〜3月6日。

B　[方角]

画17は日南海岸である（原作でそうコメントしているのだから間違いない）。2人は日南海岸の波打ち際で最後のデートをしている。そして、飛雄馬は海上空高く輝く星を指していっている。「あの星は・・・ KYOJIN no HOSHI です」と。
日南海岸は、九州南部東側の海岸。よって、飛雄馬は東の空を指しているのだ。

[方角に関する考察の結果]・・・ 東の空の比較的高い位置にある。

C　[時刻]

二軍落ちを言い渡されたミーティング終了後、飛雄馬は止める伴宙太に次のように言って宿舎（宮崎市内）を出ている。
「美奈さんに会ってくる・・・待ち合わせの場所も約束してある。時刻にはおくれたがすっぽかしもできまい」と(20)。
　美奈さんは看護婦である。それも宮崎市内からだいぶ遠い山村の、バスも途中までしか通っていない山中の村の診療所の看護婦さんである(21)。そんな美奈さんとの待ち合わせである、遅い時間に待ち合わせるはずはないだろう。ましてや2人は待ち合わせの後、日南海岸に移動している（二軍落ちを言い渡され、美奈さんと別れることを決意した飛雄馬が、最後の場所として選んだのだと推測できる）。宮崎市内から日南海岸までは車で約30〜40分、男女関係においてはきわめて古風な飛雄馬は若い女性を夜遅くまでひきとめておくようなことはしまい。よって、画17のシーンはそれほど遅くない時間と考えられる。

星図 V 日南海岸/日本（北緯31°、東経131°） 昭和44年3月1日 20:30東の空、仰角0〜90°

[時刻に関する考察の結論]・・・美奈さんとの待ち合わせは、常識的な2人のこと、彼女の勤務が終わってからであろう。それから美奈さんは「山の中」から宮崎市内まで出てくるのだから、待ち合わせ時間は概ね6〜7時ころか。その待ち合わせ時間に遅れた原因のミーティングはいきなり二軍落ちを宣告している。つまり技術的なことにはふれずじまいの、比較的短いものだったと推測できる。待ち合わせに遅れたといってもそれほどのものではなかっただろう。30分〜1時間程度の遅刻か。その後、2人は日南海岸に移動し、しばし恋人同士の語らいなどをした後で飛雄馬は KYOJIN no HOSHI を指さしている。
以上から、画17は8〜9時頃のことと推定する。

[昭和44年、春、宮崎県日南海岸において指し示された KYOJIN no HOSHI についての推定]
A 季節 ： 昭和44年2月下旬〜3月6日
B 方角 ： 東の空の比較的高い位置。
C 時刻 ： 午後8時〜9時頃。


星図 V を見ていただきたい。これが飛雄馬と美奈さんがその眼で見ていたと考えられる星空だ。この中で、KYOJIN no HOSHI の候補としてあげられる星は次の4つである。
Sirius（シリウス、おおいぬ座、-0.46等）
Procyon（プロキオン、こいぬ座、0.36等）
Pollux（ボルックス、ふたご座、1.15等）
Regulus（レグルス、しし座、1.35等）



推定3: KYOJIN no HOSHI の候補として、次の星が考えられる。
Sirius（シリウス、おおいぬ座、-0.46等）
Procyon（プロキオン、こいぬ座、0.36等）
Pollux（ボルックス、ふたご座、1.15等）
Regulus（レグルス、しし座、1.35等）